手間こそが写真だった2009/10/14 20:28

 写真家のtake1mg氏のブログ、毎回静かに深い洞察が延べられているのですが、今回のエントリーは特に箴言でした。実にはっとさせられるものでした。

 "モノクロを始めて、写真は手軽でなくなった。むしろ面倒くさいものになってきた。スマートなものでもなく、ちょっと野暮ったいくらいの地道なものになってきた。"

 いままでそんな事を考えた事もありませんでした。中学生の頃、いきなりDPEから写真を始めた私は、それが写真だと思っていました。だから若い頃にはDPEに何のストレスも感じなかった。ところが今になってこれらの行為がとても面倒になってきてしまいました。「なんでこんなに面倒くさいのだろう?」と、今年なんぞはほとほと嫌になってきていたのですが、そうでした、面倒くさいのが写真なのでした。

 面倒くさくない方法を模索するのは、僕にとっては逆に写真から離れる事になるのかも知れません。だとすれば面倒を厭うて手間を省く事を考えるより、その面倒さをより楽しくスマートに、快適にこなせるようにする方がきっと良いのでしょう。

 彼は私より若く、おそらく写真の経験も私より少ないでしょう、しかし写真という行為を捉えると言う事については、私よりもずっと高みを、また真実に近いところを飛翔しているのだと思いました。

 去年の2nd6-Motion"R"展に出品された彼の作品のなかに、背の高いススキの原にたたずむ女性を撮ったものがありました。穏やかで静かな、それでいて魂を感じる名作でしたが、そうか、この洞察があの作品を生むのだな、そう思いました。

 今の私にはたいへん心に響く一文でした。

コメント

_ take1mg ― 2009/10/15 11:09

こんにちは。いやはや、お恥ずかしい。無闇に浅はかなことをくっちゃべっております。

私は比較的最近写真を始めたものですから、当然のごとくカラー写真で、写真とは撮影してDPE店に持ち込むものだと思っていました。なので、自家処理はまだまだ新鮮なのだと思います。何年も、それこそ何十年もやっていると、いい加減七面倒くさいと感じてくると思いますが、まあ、それまでは楽しんで写真できるのかな、と思います。

書いていただいた記事後半部分は、なんだか背中がこそばゆい気もしますが、こうして共感いただけることは大変うれしいことです。

互いにこの面倒くさい写真というものを見つめていきましょう。

_ うろぼろす堂寫眞舘亭主 ― 2009/10/15 11:47

 いやほんとうに、なんというか少し大袈裟に言うなら魂が揺さぶられるほどでした。本当に洞察が深いと思いました。写真に関して、今年はすっかりしょぼくれていましたが、光明が見えたように思います。ほんと、素晴らしい言葉です。
 今、劣化しつつあるネガからのプリントを作るべく、準備にかかっているのですが、自分の処理したネガがたった30年と少しで劣化が始っているのがショックでした。気の重い作業になるなと凹んでいたのですが、take1mgさんの文章を読んで、少し元気が出てきました。ありがとうございました。

 まもなく写真展ですね。楽しみにしております。必ず参上いたしますので。

_ じな ― 2009/10/18 10:41

ワタシもモノクロの自家処理から写真を始めていますが主力がカラーポジに移行するとともに写真がどんどん自分から離れていくような感覚がありました。それがデジタルの普及で又自分の手元に帰ってきたような気がしています。

暗室ならぬモニター上での作業ですが、最終段階まですべて自分で処理しなければならない、処理出来ることにほっとしてるのも事実です。

_ うろぼろす堂寫眞舘亭主 ― 2009/10/19 00:34

>じなさん

 つまりはできるだけ自身が関与できるという事が必用な訳ですな。銀塩でもデジタルでも。

_ manicure ― 2017/05/03 13:18

I was recommended this blog by means of my cousin. I'm
not positive whether this submit is written by means of
him as nobody else recognise such special about my trouble.
You're wonderful! Thanks!

_ foot pain epsom salt ― 2017/07/04 04:22

Incredible story there. What happened after? Thanks!

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