東京Y字路/横尾忠則2009/11/09 12:43

このボリュームで3,800円はお買い得。

 細江英公の「鎌鼬」に続いて横尾忠則の"写真集"である、「東京Y字路」です。

 写真の技術やその内容としては、淡々とY字路を写し続けたものでたいしたものではありませんが、その量たるや膨大で、よくこれだけ写して回れたなと思います。そのエネルギーが凄まじいです。それが結果としてやはり素晴らしいものと言えるものになっています。

 私と比べちゃぁいけませんが、この年齢でこのエネルギー。芸術家というのはつくづく高エネルギーなんだなと思います。私なんぞはさしずめ変温動物で、今年はまだ昨冬の冬眠から目覚めていないうちに再び次の冬眠に入りかかっている感があります。

 商売としても、シロートに毛の生えたような奴が写真集出しちゃわないうちに先にやっちゃうというなかなかのしたたかさも感じられます。

 なんだかこれでY字路が写しにくくなっちゃったなぁと思うと、なかなか癪に障る写真集でもあります。

鎌鼬/細江英公2009/11/08 18:26

復刻廉価版だけれどそれでも5,000円

 私は「ガツンと来る写真」が撮れません。大口の割には神経は細く、喧嘩っ早いくせに考え込んでしまうからでしょうか。

 この「鎌鼬」は私の好きな「ガツンと来る」写真の一つです。トーンは粗く、ファインプリントでもない…どころか、明らかなバーニングやドッチングの痕跡が見えても意に介さず見せてくる…そんなものにびくびくするような自信の無いものではないとばかりに、圧倒的な力で迫ってきます。

 私はこの手の演出写真が大好きで、「絶対スナップ。絶対非演出。」という主義ではありません、無論「絶対スナップ。絶対非演出。」と云うスタンスも大いに認めるところですが…。
 この写真集は演出写真であって、しかもドキュメンタリーのように力強く、ページをめくるたびに唸らされました。

 私がコントラストの高い、粒子の粗い、ブレもボケもある写真を撮ったとしたら…それはただの失敗写真にしか見えないのでしょうねぇ。
 それでもこんな「ガツンと来る写真」を撮ってみたいものです。いつかきっと。

 それにしても、やはり表現は「魂」だと思いました。

ゆっくりと南へ2009/02/15 17:17

ネットから拝借。

 team94の"Slowly"も終わりましたが、このタイトルから連想したのは、草上仁のこの著書です。
 SF短編集で、表題となっている作品に出てくるのが「スロウリイ」という生物です。
 
 とてもリリカルで秀逸な一編、お勧めします。

にゃらぁきぃ~2009/02/10 10:30

古書店の映像から拝借

 表題の本を買いました。
 別になんと言うことのない本なのですが、このキャラクタが良くできているなぁと思ったので、買ってみました。荒木経惟は大好きな写真作家ですしね。

 荒木経惟みたいに奔放に撮れたらなと思うことが良くあります。できるだけそうしたい、けどできないだろうしできたところで、今の生活の制約の中で発表することもどうせできないし。死んでから誰かにやってもらいましょう。

 荒木経惟のどこがいいかと言えばライカのフィルム交換が上手なことです。いつものような流暢な軽口を叩きながら手もとをみずに交換できる。別に珍しくも無いし当たり前のことなのでしょうけれど、それでも良いなあと思います。

 この本を見て、ひさしく交換レンズを持って撮影に出ていないことを思い出しました。ライカの交換レンズは小さいのだからせめて数本持って出ても良いのではないかと思いました。今度はそうしましょう。

Instant Light: Tarkovsky Polaroids2008/05/14 17:20

Amazonで\3,392
http://www.amazon.co.jp/Instant-Light-Tarkovsky-Tonino-Guerra/dp/0500286140/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1210753835&sr=8-1

 「キチショー、上手いな…」というのが第一印象です。

 普段はシネスコサイズ…スチル写真で言えばパノラマサイズになるのでしょうか…でフレーミングしているのに、ポラロイドのスクエアでも完璧にフレーミングしてくる才能には、遠い存在だとはいえそれでも羨望の気持ちを抱かざるを得ません。
 
 完璧なフレーミングとポラロイド独特の質感から醸し出されるこの静謐さは、ポラロイド写真の「写らなさ」とサイズの小ささも大きく関っているように思えます。写真に於いて「写らない」ということは静かであるということです。

 作者の名前はアンドレイ・タルコフスキー。映画監督です。

セコニツクユニバーサルL-II型電気露出計2008/04/30 22:21

いわゆる「紙モノ」です。
 手持ちのセコニック露出計のカタログを古書市で見つけたので思わず買ってしまいました。「セコニツクユニバーサルL-II型電気露出計」。
 セコニックのサイトにはまだ取説が残されています。PDFで一枚だけの素っ気ないものですが
 http://www.sekonic.co.jp/product/meter/pdf/L-II.pdf
 こんな昔のカタログが見つかるなんてのは、なかなか愉快なものです。

新風舎倒産2008/01/07 18:41

 評判の悪かった自費出版を主に扱う新風舎が倒産だそうです。
 これには、ザマミロと喜んでいる人も多いでしょう、実際に自分の周囲にもこの会社にやられそうになった人が居ます。
 写真関連では「平間至写真大賞」(現在は新風舎写真賞に変わっています)なるコンテストを開催し、優勝には賞金30万円(?)と写真集の出版という賞が贈られます。ここまでは良いのですが、賞に漏れた人に誘いの電話ががかかって来ます、「今回は大賞を逃したが非常に良い作品でこのままにしておくのは惜しい、自費出版してみないか?」という内容です。無論それなりの経費はかかります、バカにならない額です。そして問題になったのは「一般書店へも配本する」と言っておきながら実際には殆どそんなものは行われず、宣伝費だの何だのとオプションを次々に繰り出してきては、余分に金を支払わせようとする・・・。とまぁ、詐欺まがいと言ってもいいような強引なやり方で、このため「被害者」も出る始末でした。そんな悪評がネットだのマスコミだのに流れ、会社がやり方を少し改めた結果、倒産に至ったという訳で、つまりはやはり悪いやり方をしていたと言う事でしょう。
 あくどい奴が滅びるのは喜ばしい事ですが、すでに支援を名乗り出ている印刷会社があるのだとか。やはり相当美味しいビジネスなんでしょう、自費出版というのは。そりゃそうですよね、もとを回収するために必死で営業しなくても、作るだけで良いんですから。

村田兼一・PRINSESS OF DESIRE2007/09/29 23:59

案内葉書
 大江ビルヂングにある乙画廊で開催されている村田兼一さんの出版記念写真展を拝見しました。
 ずっとブレのない彼の世界だが非常に控え目に新たな試みも加えられていました。しかしやはりその世界に変わりはありません。
 今回出版された写真集も拝見した。彼の所思とは少し異なった解釈と内容であると彼自身のブログに書かれていた通り、いくつかの作品にその答えを見たように思いました。
 印象的であったのは、写真集のプロフィールにKen-ichi Murata and his muse Yumiko Yamasaki"とテキストが添えられ、作者と作品の彩色などを受け持っている山崎さんが一緒に写っている写真が使われていた事です。
 "his muse"
 まさにその通り。芸術家は美神に祝福されていなければならないのです。美神に棄てられる事は感性の枯渇を意味し、破滅です。表現の原動力は闇の底からわき起こるリビドーではあるでしょう、しかしそれを芸術に昇華させるのは美神の業であるはずです。

 素晴らしい。

 写真展は10月6日まで、西天満(米国領事館東)の大江ビルヂング1階、乙画廊にて。

ailes ~エール~ アンドレア・ジェントゥル2007/02/15 10:37

写真集を持つ左手
 古書市でたまたま見つけた一冊。光琳社出版もすでになく、このシリーズもなかなか見かけなくなってしまいました。銀塩写真が衰退するのは時代の趨勢でしょうが、写真集が衰退する事には不安を禁じ得ません。
 8×10で撮られた写真には独特の調子がありますが、この写真集もやはり8×10だと一目で分かる調子の作品ばかりです。
 作品はSally MannのImmediate Familyと共通する印象を受けますが、こちらの方がよりリリカルでファンタスティックな印象を受けます。Immediate Familyよりも「淡く」て好きかなぁと思いました。
 8×10・・・A4サイズで撮られているにも拘らず、写真集のサイズは小さくてとてももったいないと思いますが、手軽に廉くこう云った写真集が手に入るという事は、とても幸いな事だったのですが・・・。
 私もこんな風に8×10のカメラを振り回す事が出来たならと思います。

横尾忠則・Y字路2007/01/08 12:18

横尾忠則Y字路
 昔、辻は異世界が交差する場所であり、そこには魔物や霊魂なども行き交うと思われていました。私の住む土地からそう遠くないところにある神社は「辻占」というものをやっていて、それは辻に立ってそこを行き交う人を観察する事によってそこに雑じって行き交う霊魂の言葉を聞き占うというものです。それ程辻という場所は特別の場所であった訳です。
 さて、Y字路は四つ辻とは全く違った世界ではありますが、やはりそこにあるものは一種独特の「気」を感じずには居られません。
 横尾忠則氏のこの作品はずっと気になっていたのですが、友人pen.panda氏がFlickrに"Y"Like a Tadanori Yokooと名付けた良い作品を掲載しておられましたので、今回画集を買うに至りました。私もpen.panda氏と横尾忠則氏の真似をして、今年の6×9での作品はこういう写真を撮ってみたいと思っています。pen.panda氏の作品のように上手く行きますかどうか?

pen.panda氏のFlickr、"pen.panda's photos"
http://www.flickr.com/photos/penpanda/
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