"Slowly" team94写真展2009/02/09 11:06


 team94写真展"Slowly" を見てきました。
 きれいにまとまっていて、総花的な発表会っぽい雰囲気は無く、きちんとした写真展に仕上がっており、team94のブログに書かれているように、非常に満足すべき仕上がりになっていると思いました。

 メンバーの中では昨年、今は閉鎖された"グレイス"で行われた「√3のてふてふ」に参加されていたクラミツタカコさんと小島由紀さんを存じていまして、彼女たちのこの一年たらずの変化も見せて頂きました。

 小島さんは「√3のてふてふ」の時も、非常に深い色合いのしっかりしたトーンの写真を作られる方でしたが、今回は前回よりもより色の奥行きと深みが増しており着実に独自の世界を構築されていました。やや暗く落としたトーンの中に、しっかりとした色が浮かび上がる作品これらの作品は、まるでメゾチントのようです。稠密とでも言えばよいのでしょうか?多くのエネルギーがそこに注がれているのがよく判ります。
 彼女は非常に丁寧な作品作りをされるようで、作品の全てにそれがにじみ出ていました。プリント自体もそうですが、マットワーク、フレームワークに至るまできっちりと仕上げておられ、非常に真摯な姿勢で写真に向かっておられるようでした。非常に理知的な雰囲気を醸し出されていました。こういう言い方はどうかとは思いますが、この作品を若い女性が作られていると知れば驚かれると思います。一切の甘えを排除して作品が作られています。

 クラミツさんのメインの作品は、日常の日記がわりの写真のなかから選択されたものをピンアップで展示されていました。
 この作品は彼女が日々積み重ねてきたポートフォリオの中から選びだされているのですが、この作品のみならず、もとになっているポートフォリオそのものが素晴らしいものでした。ご本人はそれに気付かれていたかどうか(笑)?内向的独善的なものにならず、しかもよくある手の「女の子写真」にならず、なんとも云えず好感の持てるアンソロジーに仕上がっていました。ご本人にお尋ねしたところ、こうやって記録して見返しながら、良くないところは改めているとのこと。つまり非常に地味で真っ当な努力もされているわけです。そうやってこの手の作品をつくれば、次第に、つまらない、ありきたりな作品に流れていってしまうものなのですが、そうならないところに、彼女の非凡さがあると思いました。写真と言うことを意識しきちんとそれをフィードバックさせることを繰り返し、しかもありきたりにならない。なかなかそうは行かないものです。

 クラミツタカコさんはかなりの数の点数でポートフォリオを作っておられたので、今すぐにでも個展の計画をすべきです。間違いなくかなり素晴らしいものになると思います。私はそう思いますね。
 小島由紀さんも、今回のような作品で点数がそろえば(作品のストックをお訊きしていなかったので)やはり個展を開かれるべきです。
 共同展ではない、個展です。何故かと云えば、お二人とも自分の宇宙を持ちだからで、ギャラリの空間をその自分の宇宙に変えてしまえる個展は、やはり見る者へ大きな楽しみを与えてくれますからね。お金もかかるしエネルギーも必要ですが、是非とも個展を検討して頂きたいです。彼女たちの内宇宙に入り込む機会を与えて頂きたいと思います。

 今回はなにかツボにはまったというか、衝撃的でもあったし、とても刺激になりました。おかげで北新地駅まで戻る間にフィルム4本撮影してしまいましたよ。