夢のボロ市~真夜中に小声で歌う2009/06/16 23:27

 「こう云う写真を撮りたい!」と心の奥からわき上がってくるイメージや感情もありますが、同時に、この「世界を写真に撮りたい」と思う事も多くあります。
 ずっと想っているのにまったく手も付けられないのは「銀河鉄道の夜」。多くのシーンを現実世界のなかから切り出したいと、もう随分長い間想っています。ところが想っているうちに時間切れが近づいて来ています。そろそろ急がなくてはなりません。

 多くの文学に写真を撮る気持ちを刺激されますが、こんな詩歌も、この現実世界から切り出してみたいです。ミヒャエル・エンデの「夢のボロ市」(Trödelmarkt der Träume)。詩(正しくは詞)全節を引用。丘沢静也訳。

----------------------------

夢のボロ市 

きょう、夢のボロ市へ行ってみた。
世界のはじっこにあって、いろんなものがあった
盗まれたもの、投げ捨てられたもの、壊れたもの、
中古の、そしてそのまた中古の夢の品。
空飛ぶ絨毯はイガの穴だらけ、
でこぼこの光輪は、星とおさげ髪、
鍵のない空中楼閣は、錆でボロボロ、
昔かわいがられていた人形も、今は首がない・・・

そしてそんなガラクタたちのなかに、突然、
ぼくらの愛の、美しい夢も発見したのだ。
その黄金色は曇っていて、夢は壊れていたけれども、
黄金のようにすばらしく―そしてあいかわらず美しかった。
できればそれをきみに返したいと思って、
蒼ざめた男に尋ねてみた。
にやりと歯のない口をあけ、男はぼくを見つめ、咳ばらいして、
恥知らずな値段を吹っかけてきた。

なるほどそれだけの価値はある―けれどもぼくは交渉した。
敵はだまっていた、が、折れなかった。
だから夢は買いもどせなかった。
風向きがよくないんだ。もうそんなに豊かじゃないんだ。
結局すごすご手ぶらで引き返したが、
ひとつ知りたいことがあった。
あれは贈られたのか―盗まれたのか―投げ捨てられたのか ?
ねえ、きみ、教えて―どうやってあの夢があそこにまぎれこんだのか ?

----------------------------

 ちなみに私の娘はカタカナで「モモ」と言う名前です。エンデの著作からいただきました。